結節性硬化症は全身の病気で、体のいろいろな場所にさまざまな症状があらわれます。ただ、生まれたときにすべての症状が出ているわけではありません。成長にともなっていろんな症状が出てくることが多く、年齢によって注意する症状が違います。また、結節性硬化症と診断されても、症状が出ずに、 将来的にも何も問題なく一生を過ごせる場合もあります。個人差が大きいこともこの病気の特徴の一つです。
頭をかくんとたれるタイプのてんかん(点頭てんかん)や、意識がなくなり手足の一部がけいれんするタイプのてんかん(複雑部分発作)が多くみられます。
心臓に横絞筋腫(心横紋筋腫;しんおうもんきんしゅ)という良性の腫瘍ができて、不整脈の原因となることがあります。この腫瘍は通常、成長にともなって次第に小さくなり、自然に消えることが多いのです。まれに腫瘍が心臓内部の血液の流れをとめてしまい、命にかかわることもありますので、症状がある場合は通院を続け、注意深く経過をみていくことが必要です。
皮膚には白いあざ(白斑;はくはん)がみられます。赤ちゃんのときは目立ちませんが、日焼けをするとこの部分が白く目立つようになります。
乳児期に結節性硬化症によるてんかんがおこると、人とうまくコミュニケーションが取れなくなったり(自閉症)、言葉・読み書きの発達が遅れる(発達障がい)ことがあります。また、集中力や落ち着きがなく、イライラしているような症状を見せる(ADHD;注意欠如・多動性障がい)こともあります。
幼稚園に入るころから、顔のほほのあたりに赤い糸くずのようなしみ、イボのような小さく硬いもり上がりがいくつもあらわれる(血管線維腫;けっかんせんいしゅ)など皮膚に症状が出ることがあります。
脳の中をみることができる検査をすると、SEGA(上衣下巨細胞性星細胞腫;じょういかきょさいぼうせいせいさいぼうしゅ)と呼ばれる腫瘍が見つかることがあります。腫瘍の大きさやできた場所によっては、ひんぱんに吐いたり、頭を痛がるといった症状などがあらわれることもあります 。
小学校にあがるころ出やすい症状として、ほほや下あごに赤みをおびたぼつぼつ(血管線維腫;けっかんせんいしゅ)があります。ぼつぼつには、皮膚の色に近いもの、少し大きく平らなもの、少し黒みをおびたものなどがあり、だんだん数が増えていきます。
結節性硬化症のほとんどの患者さんの脳の中には、この病気の名前の由来になっている「結節(けっせつ)」というふつうの大脳より硬い部分が複数できています。
学童期に脳にSEGA(上衣下巨細胞性星細胞腫;じょういかきょさいぼうせいせいさいぼうしゅ)がみられることもあります。
眼の網膜にも腫瘍(網膜過誤腫;もうまくかごしゅ)ができることがあります。しかし、視力にはほとんど影響がありません。
背中や腰のあたりを中心に皮膚にでこぼこした軽い盛り上がり(シャグリンパッチ)ができることがあります。
腎臓に腎AML(腎血管筋脂肪腫;じんけっかんきんしぼうしゅ)と呼ばれる、血管や筋肉、脂肪を含む良性の腫瘍ができることがあります。この腫瘍は、ほとんどの場合、大きくなるまで症状が出ません。腫瘍が大きくなると破けて出血しやすくなり、出血すると腎臓を傷つけてしまったり、出血性のショックをおこすことがあり、最悪の場合は命にかかわることもあります。自覚症状が出ないため、腫瘍が大きくなるまで自分で気がつくのは難しいといえます。そのため、定期的に腎臓の検査を受けて腫瘍の大きさをみていくことが大切です。
腎臓にみつかる症状には、腎AMLのほかに、腎嚢胞(じんのうほう)と呼ばれる、腎臓の中に袋状になり液体がたまる症状があります。大きくなると腎臓のはたらきを低下させる原因になるため、こちらもあわせて腎臓の検査で確認します。
まれに(5%未満)腎臓に悪性のがんができる場合もあります。腎臓のがんも小さいうちに発見することで治療が可能ですので、定期的に腎臓の検査を受けることが大切です。
監修:鳥取大学名誉教授 大野耕策 先生