各症状と定期検査、治療について

結節性硬化症になると、さまざまな合併症や症状がおこる可能性があります。ここでは、それらの合併症や症状の具体的な説明と、検査や治療法の説明、検査や治療がなぜ必要なのかを解説します。

上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)

上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)は、どんな病気ですか?

イラスト 上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)

上衣下巨細胞性星細胞腫(じょういかきょさいぼうせいせいさいぼうしゅ)は、略してSEGA(セガ)と呼ばれる脳にできる腫瘍で、結節性硬化症の代表的な症状の一つです。1cmほどの腫瘍ですが、徐々に大きくなることがあります。小さいうちは症状がなく、問題にならない場合もありますが、大きくなると脳の他の部位を圧迫して症状が出てくるため、治療が必要になります。

上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)ができやすいのは何歳ごろですか?

上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)は、生まれた直後や出生後早期にも認められます。
とくに幼児期から思春期にかけては急速に大きくなることがあるため注意が必要で、定期的に検査を受けることが大切です。脳の中をみることができるCTやMRIという検査をします。

上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)ができると、どんな症状が出ますか?

上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)が大きくなると脳内の圧力が高まって、頭痛や吐き気・おう吐、視力障害などがおこることがあり、治療が必要です。
また、上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)のできる場所によっては、「水頭症(すいとうしょう)」になることもあります。水頭症は、脳から脊髄に流れる体液(脳脊髄液)の流れが妨げられ、脳の中にたまり脳が圧迫される病気です。水頭症になると、命にかかわることがあるため速やかな治療が必要です。

どのような検査を受けるのですか?

脳の中をみることができるCTやMRIという検査をします。検査時に痛みはありませんが、動かないことが必要で、検査には時間がかかります。

上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)には、どんな治療をおこなうのですか?

脳内の圧力が高まっている場合には、上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)を手術で取り除いたり、放射線を使ったガンマナイフと呼ばれる治療で腫瘍を小さくします。

mTOR(エムトール)阻害薬という飲み薬が使えるようになり、お薬によって上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)を小さくするという選択肢も増えました。

水頭症に対しては、脳にたまった余分な「脳脊髄液」をチューブでお腹の中などに流す手術(シャント手術)がおこなわれます。

どの治療法を選択するかは、それぞれの治療法の利点と欠点を知って、主治医とよく相談して決めましょう。

●上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)に対する治療

治療法 メリット デメリット
脳腫瘍摘出術
(のうしゅようてきしゅつじゅつ)
SEGAを取り除くことができます

頭痛や吐き気・おう吐などの症状がやわらぎます
開頭手術になるので術後の回復に時間がかかります

手術にともない出血や感染症、合併症がおこるおそれがあります
ガンマナイフ 放射線を使った治療です

手術にくらべて体への負担が少ない治療です
大きな腫瘍は治療できません

手術にくらべて効果が出るまでには時間がかかります
mTOR(エムトール)阻害薬 腫瘍をある程度小さくすることができます

1日1回の飲み薬なので、生活への負担が少ない治療です
副作用(口内炎、感染症、息切れや呼吸困難など)が出るおそれがあります

●水頭症に対する治療

治療法 メリット デメリット
シャント手術 水頭症を改善できます チューブがつまるとおう吐などの症状が再発するおそれがあります

SEGAは、そのままの状態となります
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腎臓の血管筋脂肪腫(腎AML)

イラスト 腎臓の血管筋脂肪腫(腎AML)

腎臓の血管筋脂肪腫(腎AML)は、どんな病気ですか?

腎臓の血管筋脂肪腫(けっかんきんしぼうしゅ)は、略して腎AML(エーエムエル)と呼ばれる、おもに腎臓にできる腫瘍です。結節性硬化症とは関係なくこの病気だけを発病する患者さんもいます。
腫瘍ができてもすぐには症状があらわれず腎臓の機能にも影響が出ません。しかし、腫瘍が大きくなってくると、周囲を圧迫したり、腫瘍から出血することもあるので注意が必要です。

腎臓の血管筋脂肪腫(腎AML)ができやすいのは何歳ごろですか?

腎臓の血管筋脂肪腫(腎AML)は、10歳代半ばから35歳ごろに発症しやすく、女性に多くみられる病気です。10歳代で腎臓の血管筋脂肪腫(腎AML)が急に大きくなることがあります。成人の結節性硬化症の患者さんには、小さいものも含めれば多くの人に腎臓の血管筋脂肪腫(腎AML)がみつかります。

腎臓の血管筋脂肪腫(腎AML)ができると、どんな症状がありますか?

腎臓の血管筋脂肪腫(腎AML)が小さいときは、ほとんど症状が出ません。大きくなってくると「わき腹の痛み」「腰のあたりでこぶ状のものに触れる」「血尿が出る」「血圧が高い」などの症状が出てきます。検査を受けないと、病状が悪化して症状が出るまで気がつかないことが多いので、定期的に腎臓の検査を受けることが大切です。ほとんどの腎臓の血管筋脂肪腫(腎AML)は、画像検査(超音波検査;エコー、CT、MRIなど)で見つけることができます。検査時に痛みはありません。

どのような検査を受けるのですか?

腎臓の超音波(エコー)検査で腎臓の血管筋脂肪腫(腎AML)の大きさを調べたり、尿検査や血液検査で腎臓のはたらきに異常がないかを調べます。
腫瘍ができる前から定期的に腎臓の検査を受けることが大切です。
より詳しい検査が必要なときは、腎臓を見ることができるCTやMRI検査という検査がおこなわれます。

腎臓の血管筋脂肪腫(腎AML)には、どんな治療をおこなうのですか?

腎臓の血管筋脂肪腫(腎AML)は自然に小さくなることはありません。
腫瘍が大きくなってくると、腫瘍から出血をおこし、患者さんの命にかかわったり、腎臓がはたらかなくなる危険性が出てくるため、治療が必要になります。

画像検査での腫瘍の大きさや、わき腹の痛みおよび尿に血がまじるなどの自覚症状、高血圧などの症状を組み合わせて治療をおこなうかどうかが決定されます。

腎臓の血管筋脂肪腫(腎AML)を取り除く手術、腫瘍に栄養を送っている血管をふさいで腫瘍を小さくする手術(動脈塞栓術;じんどうみゃくそくせんじゅつ)などがおこなわれる場合もあります。

mTOR(エムトール)阻害薬というお薬が使えるようになり、飲み薬で腎臓の血管筋脂肪腫(腎AML)を小さくするという選択肢もふえました。

どの治療法を選択するかは、それぞれの治療法の特徴を知って、主治医とよく相談して決めましょう。

●腎臓の血管筋脂肪腫(腎AML)に対する治療

治療法 メリット デメリット
腎部分切除術(腎摘除術)
(じんぶぶんせつじょじゅつ)(じんてきじょじゅつ)
腎AMLを取り除くことができます 開腹手術になるので術後の回復に時間がかかります

腎臓のはたらきが低下するおそれがあります
動脈塞栓術(どうみゃくそくせんじゅつ) 腎部分切除術よりも体への負担が少なく、早い回復が期待できます 痛みや発熱などが出るおそれがあります

感染症のおそれがあります
mTOR(エムトール)阻害薬 腎AMLをある程度小さくすることができます

飲み薬なので、生活への負担が少ない治療です
副作用(口内炎、感染症、息切れや呼吸困難など)が出るおそれがあります
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てんかん

てんかんは、どんな病気ですか?

てんかんとは、脳の中の神経細胞が異常に興奮することで、発作がおこる病気です。
結節性硬化症では、もっとも発症する頻度が高く治療が必要な病気です。
てんかん発作をきっかけにして結節性硬化症がみつかる患者さんが多く、小児の結節性硬化症患者さんの10人中6~9人にてんかんがみられるといわれています。

てんかんがおきやすいのは何歳ごろですか?

生後1年以内に約6割の方が発病します。

てんかん発作は、どんな症状ですか?

早期の乳児期には、両腕をあげ頭部を前屈する強直発作(点頭てんかん)がみられます。数秒間の間隔で数回~数十回反復することが多いです。
乳幼児期には、意識がなくなったり、体の力が抜けたり、手足の一部がこわばったり、けいれんしたりする、タイプの異なるてんかん発作がみられます。
発作のタイプは、個人によって違いますし、年齢によっても変わることもあります。

イラスト てんかん 両腕をあげ、頭部を前屈する。数秒間の間隔で数回~数十回反復
イラスト てんかん 身体の一部のけいれんや、一部分から始まって全身に広がる発作(ジャクソン発作)
イラスト てんかん 突然の意識消失と数秒後の回復。過呼吸による誘発
イラスト てんかん 突然の瞬間的な脱力。顔面・頭部外傷をきたしやすい
イラスト てんかん 全身がこわばる発作→グーッと背中を反って体を硬くし、腕などがぴくぴくする発作(間代発作)→発作後睡眠など→正常に戻る
イラスト てんかん 意識は混濁してぼーっとしてて、口をもぐもぐしたり、手を服の上でもぞもぞしたり、いつもおこなっている動作をする(自動症)

どのような検査を受けるのですか?

脳波検査で、てんかんであるかどうか、またどのような種類なのかを判断します。検査による痛みなどはありません。
脳波検査には、眠っているときに測定する脳波記録とおきているときに測定する脳波記録があります。

てんかんには、どんな治療をおこなうのですか?

てんかんの治療は、てんかん発作をおさえるお薬による治療をおこないます。てんかんをおさえるお薬は1種類からはじめて、効果がみられないときはほかのお薬に変えるほか、複数のお薬を使用して治療することもあります。お薬でてんかん発作をおさえられないときは、手術も検討します。

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心横紋筋腫

心横紋筋腫は、どんな病気ですか?

イラスト 心横紋筋腫

心横紋筋腫(しんおうもんきんしゅ)とは、心臓の筋肉にできる腫瘍です。結節性硬化症の患者さんにできますが、結節性硬化症とは関係なく、この病気だけを発病することもあります。

心横紋筋腫ができやすいのは何歳ごろですか?

心横紋筋腫は、お母さんのお腹の中にいるころに腫瘍ができて、胎児への超音波検査で発見されることが多い腫瘍です。ほとんどは、生まれた後、少しずつ小さくなり自然に消えます。

心横紋筋腫ができると、どんな症状がありますか?

症状がないことが多いといわれていますが、いろんな不整脈が現れることがあります。まれに心横紋筋種が心臓内部の血液の流れを止めてしまい、心不全を起こし、命にかかわることもあります。

どのような検査を受けるのですか?

心臓の超音波検査や心電図検査をおこないます。症状が軽いときには、定期的にこれらの検査を受けて様子をみます。

心横紋筋腫には、どんな治療をおこなうのですか?

症状がないときはそのまま様子をみます。命にかかわる症状がみられるときは心臓の手術を検討します。

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肺のリンパ脈管筋腫症(肺LAM)

肺のリンパ脈管筋腫症(肺LAM)は、どんな病気ですか?

イラスト 肺のリンパ脈管筋腫症(肺LAM)図

肺のリンパ脈管筋腫症(りんぱみゃっかんきんしゅしょう)は、略して肺LAM(ラム)と呼ばれる肺にできる腫瘍で、肺のはたらきがゆっくり低下していく病気です。結節性硬化症の患者さんにも発症しますが、この病気だけを発病する患者さんもいます。

肺のリンパ脈管筋腫症(肺LAM)になりやすいのは何歳ごろですか?

肺のリンパ脈管筋腫症(肺LAM)は20歳以上のとくに女性の結節性硬化症患者さんにおきやすい病気です。

肺のリンパ脈管筋腫症(肺LAM)になると、どんな症状がありますか?

体を動かしたときに息苦しさを感じたり(労作時呼吸困難;ろうさじこきゅうこんなん)、胸の痛みやせき、たん、血のまじったたんといった症状が出る気胸(ききょう)などがあらわれることがあります。重症になると、酸素を吸入する治療が必要になったり、進行すると命にかかわることもあります。

肺のリンパ脈管筋腫症(肺LAM)には、どんな治療をおこなうのですか?

肺のリンパ脈管筋腫症(肺LAM)を調べるために、CT検査などの画像検査と肺機能を調べる検査がおこなわれます。
肺のリンパ脈管筋腫症(肺LAM)の発症と進行には女性ホルモンがかかわっていると考えられているため、病状が悪化する場合にはホルモン剤による薬物治療をおこなうこともあります。また、気管支をひろげる薬などを使って呼吸をしやすくする治療もおこなうことがあります。
とくに妊娠を希望しているときには、主治医とよく相談して治療法を決めましょう。

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結節性硬化症にあらわれる皮膚症状

結節性硬化症の患者さんの多くに何らかの皮膚の症状が出ます。
白斑(はくはん)という白いあざや、血管線維腫(けっかんせんいしゅ)という顔の左右対称のぼつぼつ、シャグリンパッチという背中や腰などの軽いもり上がり、爪の線維腫(つめのせんいしゅ)という爪の周囲のぼつぼつができます。

白斑は、どんな病気ですか?

イラスト 白斑

白斑(はくはん)とは、体幹部やおしり、手足などの皮膚にできる、木の葉状のかたちの白いあざです。赤ちゃんのころは目立ちませんが、白斑部分は日焼けしないので成長すると目立つようになります。髪の毛のはえる部分に白斑ができると、毛が褐色や白毛になります。多くの場合は特に治療はおこなわず、経過を観察します。

顔の血管線維腫は、どんな病気ですか?

イラスト 顔の血管線維腫

小学校に上がるころに、ほほや下あごに赤みをおびたぼつぼつ(血管線維腫)ができることが多いです。目立つ場合には液体窒素を用いた治療や、レーザー治療、手術でぼつぼつを少なくすることができます。

シャグリンパッチは、どんな病気ですか?

10歳代半ばになると、背中や腰のあたりを中心に軽いもり上がり(シャグリンパッチ)ができることがあります。

爪の線維腫は、どんな病気ですか?

イラスト 爪の線維腫

成人するころにあらわれる、手足の爪の周囲の硬いぼつぼつ(爪の線維腫)です。出血しやすいので、生活のじゃまになるときは切除しますが、再発しやすい合併症です。

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網膜過誤腫(もうまくかごしゅ)

網膜過誤腫は、どんな病気ですか?

イラスト 網膜過誤腫

網膜過誤腫(もうまくかごしゅ)とは、眼の網膜にできる小さな腫瘍です。結節性硬化症の患者さんの約半数にみられますが、ほとんどの場合、視力に影響はなく症状はありません。
ごく一部の人で腫瘍が大きくなることで、網膜がはがれたり、視力が下がったり、失明することがあります。結節性硬化症と診断されたら、一度は眼科専門医の診察を受けることをおすすめします。また、上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)が大きくなったために視力が低下することもあるので、症状に気づいたら速やかに主治医に相談しましょう。

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まとめ

気になる症状がある場合には、気軽に主治医にご相談ください。場合によっては、他の科の専門の先生とも相談の上、みなさんにあった検査や治療などをおこないます。

監修:鳥取大学名誉教授 大野耕策 先生

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